『そして母さんは俺の子を孕む 母乳母さんのナカに戻りたい4 完結編』山本ムギ

母子作品の中ではあまり見かけないほどの長さなのに物語の軸が本当にしっかりしていて息切れ感もなく終始読み応えのあるシリーズでした。家族愛を軸に据えて多感な時期の息子を始め父母まで登場人物の感情の変化や成長が妥協なく描かれていてドラマ性が高く感動さえ覚えます。ドラマ性が高いだけあって読者を揺さぶる展開ですがそれでいて母子作品の王道は外さないので母子作品を読んでるという感覚がちゃんとあります。王道を外さないどころか安心感さえ覚えるほど丁寧です。母子作品において凄く重要な精神的な繋がり、お互いを誰にも代え難い特別な存在と認識している内心がしっかり描かれていて読了後の満足感が高かったです。この作品の最大の美点は登場人物同士の気持ちをちゃんと伝え合っていたこととそれを何度も伝えていたことそして最終的にお互いを選んでお互いの想いが繋がったことかと思います。母親が息子を心から愛しているというのがこれほどまでに伝わった作品はなかなか見当たらず母親目線で愛を伝える台詞も秀逸でまさに純度100%の親子愛です。性行為抜きにして家族愛という意味で、もしかして世のお母さんたちってこんなにも子供のことを愛しているの？と今までの母子作品の中では得られなかった感覚さえ得られました。息子視点でもまさに「母さんのナカに戻りたい」というシリーズタイトルに相応しく他でもないお母さんに肉体的精神的両方で帰巣したという感じでした。性行為でも表情や台詞だけでなく擬音にも人物の息遣いや感情がしっかり乗っていたのもあってお互いが肉体的精神的に満たされているというのが強烈に伝わってきました。シリーズ全般を通して愛に溢れた暖かい作品です。母子作品を読む人だけでなく描く人にも読んでほしい、そんな作品です。