『亜美MonAmour禁じられた愛』田中ユタカ

もう４０年近く前に製作された成人指定のＯＡＶ「くりいむレモン」シリーズ第１作の二次創作である。　これまでの二次創作と違っている点があるとすれば、所謂「薄い本」の制約故に割愛せざるを得なかった、「行為」に至るまでの日常部分を田中氏なりの解釈を施した改訂はあるにせよ、原典にかなり忠実に描いた点であろうか。いや寧ろ、原典の製作者たちが描きたかったかも知れなかったが、描けなかった部分を原典の魅力を損なうことなく描いた、とさえ言えるでしょうか。　例を挙げると、作品中に出てくる本の題名『愛と性のフーガ』、実はテリー・サザーン著『キャンディ』の映画版の日本公開時の副題であり、読みようによっては原典が影響を受けたかも知れない箇所がある（但し『キャンディ』では兄妹では無く、父娘であるが）。　製作者たちが影響を受けたと思しき時代の作品に想いを馳せることが出来るのも又、当作品を鑑賞する上での愉しみの一つである。　そして何よりも、それまでの例えば、成人映画館に年齢的に入場出来ず、入口に貼られたポスターの場面と表題を必死で憶えて、内容をあれこれ想像（創造？）した時代程では無いにせよ、まだ家庭用ビデオデッキの普及率が低い（今に比べればだが）時代に書店で入手した「フィルムコミック」の読後に憶えた当時の感慨を蘇らせる方も居れば、或いは若い方にとっては追体験させてくれる作品であると言えるでしょう。